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東京地方裁判所 昭和60年(ワ)10542号 判決

原告 株式会社ヨドバシカメラ

右代表者代表取締役 藤沢昭和

〈ほか一名〉

右両名訴訟代理人弁護士 近藤節男

同 園高明

同 栗原輝子

被告 株式会社アロマカラー

右代表者代表取締役 奥沢和夫

〈ほか一名〉

右両名訴訟代理人弁護士 山本孝

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは各自、

(一) 原告株式会社ヨドバシカメラに対し、金五〇〇万円及びこれに対する昭和六〇年九月二二日から完済まで年五分の割合による金員

(二) 原告鈴木昭に対し、金五〇〇万円及びこれに対する昭和六〇年九月二二日から完済まで年五分の割合による金員

を支払え。

2  被告株式会社アロマカラーは原告株式会社ヨドバシカメラに対し、金五〇〇万円及びこれに対する昭和六〇年九月二二日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  (当事者)

原告株式会社ヨドバシカメラ(以下「原告会社」という。)はカメラ、フィルム等の小売業等を営む会社であって、原告鈴木昭(以下「原告鈴木」という。)は同社の取締役仕入部長であり、他方、被告株式会社アロマカラー(以下「被告会社」という。)はフィルム等の販売を業とする会社であって、被告奥沢和夫(以下「被告奥沢」という。)は同社の代表取締役である。

2  (前訴の提起及びその結果)

(一) 被告会社は昭和五八年一〇月一四日東京地方裁判所に対し、原告両名、平塚勇(以下「平塚」という。)、株式会社不二写真(以下「不二写真」という。)及び甲野太郎(以下「甲野」という。)を相手方として、共同不法行為を理由とする約一億八〇〇〇万円の損害賠償請求訴訟(以下「前訴」という。)を提起した。その請求原因の要旨は次のとおりである。

(1) 不二写真の代表取締役である甲野は、原告鈴木及び運送業者平塚と共謀の上、代金支払の意思も能力もないのにあるかのように装い、昭和五八年一月二五日から同年三月二日にかけてほぼ連日にわたり、被告会社アロマカラーから商品購入名下にフィルム合計約三八万本(以下「本件フィルム」という。)を騙取し、同社に対し代金相当額である約一億八〇〇〇万円の損害を与えた。

(2) 仮に、原告鈴木に右の点の共謀の事実がないとしても、同人は故意又は過失によって甲野の騙取行為を教唆若しくは幇助した。

(3) 原告ヨドバシカメラ及び不二写真は、それぞれ原告鈴木及び甲野の行為につき民法第七一五条の使用者責任を負う。

(二) 右訴訟事件について、昭和五八年一一月一七日第一回口頭弁論が行われ、不二写真と甲野は請求を認諾し、その後被告会社は平塚に対する訴を取り下げたが、昭和六〇年六月二七日原告両名に対する請求については、不法行為の事実は認められないとして請求棄却の判決がなされ、右判決は控訴されることなく確定した。

3  (前訴提起の違法性)

原告らに対する前訴の提起は、被告らにおいてもともと理由のない訴訟であることを知りながら、あるいは容易にこれを知りうるはずであるのに、調査不十分のまま、自己の損害の回復のみを図ろうとして敢えて請求したものであって、いわゆる不当訴訟である。これは以下の事実からも明らかである。

(一) 被告会社と不二写真ないし甲野とは従前から密接な取引関係にあり、被告会社は不二写真の倒産と同時に同社の帳簿その他を調べ、甲野から詳細な事情聴取をした結果、甲野に取込詐欺の故意がなかったことは知っていたはずであり、少くとも原告鈴木には甲野と詐欺について共謀した事実がないことは知っていた。

(二) また、被告会社は前訴において、原告鈴木が甲野と詐欺について共謀していた根拠として、次の点を主張した。

(1) 原告鈴木が積極的に甲野に働きかけ、両者の間でフィルムの品名、数量等の打合せが騙取の一両日前にあらかじめ行われていたこと。

(2) 原告会社は不二写真の本来の系列に属さない商品であるコダックやサクラのフィルムを仕入れていること。

(3) 右仕入値段は極端に安く、かつ、仕入商品の量が桁外れに大量であること。

(三) しかし、右(1)については、原告鈴木は積極的に働きかけたことはなく、仮に仕入数量等の打合せがあったとしても、それは直ちに詐欺の共謀を推認させるものではない。

右(2)については、既に昭和五四年ごろから原告会社は不二写真からコダックやサクラのフィルムを仕入れており、詐欺と主張されている期間に限って右商品を仕入れていたわけではない。

同じように、右(3)については、原告会社はかなり以前から今回と同じような値段で甲野ないし不二写真からフィルムを仕入れていたのであり、その取引高も昭和五七年九月からは月額一億円を超えており、詐欺と主張されている昭和五八年一月から三月にかけてのみ異常に取引高が多かったわけではない。

(四) 原告らは前訴において右の各点を主張した結果、裁判所はその主張を認めて被告会社の請求を棄却した。

被告らは、甲野に対する事情聴取等によって、原告らの主張事実が正しいことを既に知っており、また、原告鈴木に対する刑事告訴も困難であるとしてこれを断念しながら、あえて原告らに対し不当な目的で前訴を提起したものである。

4  (損害)

(一) 原告鈴木は、永年原告会社の幹部として活躍し、業界に名を知られていたが、被告らによる前訴の提起によって詐欺の共犯者という汚名を着せられ、名誉を侵害されて耐えがたい精神的苦痛を被った。その慰謝料は、少くとも金五〇〇万円を下らない。

(二) 原告会社は創業以来、「現金大量仕入れの現金販売」をモットーとして、我が国におけるディスカウント商法のはしりとしての名声を得てきたものであるが、前訴の提起により、その商品の仕入れが、取締役仕入部長の詐欺によるという汚名を着せられ、業界におけるこれまでの信用を著しく失墜した。右信用失墜に対する損害賠償を評価すれば、その額は金五〇〇万円を下らない。

(三) 原告会社は前訴に対し応訴するため、成功報酬を金五〇〇万円と定めて弁護士村田寿男に事件を依頼し、第一審判決後の昭和六〇年七月九日右報酬を支払った。右は原告会社の財産的損害である。

5  (被告らの責任)

前訴の提起者は被告会社であるが、現実にこれを遂行したのはその代表者である被告奥沢及びその使用人であるから、被告らは、原告らの名誉、信用の侵害については民法七〇九条、七一五条、四四条等によりそれぞれ不法行為に基づく損害賠償義務があると解すべきである。

よって、原告らは各自、名誉及び信用侵害に基づく損害賠償として、被告らに対し各自金五〇〇万円、原告会社は被告会社に対し不当訴訟による財産上の損害賠償として金五〇〇万円及び右各金員に対する不法行為の後である昭和六〇年九月二二日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の事実は認める。

2(一)  同3のうち(二)の事実及び(四)のうち裁判所が被告会社の請求を棄却したこと、被告会社が原告鈴木に対する刑事告訴をしなかったことは認めるが、その余はいずれも否認する。

(二) 被告会社は前訴で主張したとおり、甲野によって昭和五八年一月二五日から同年三月二日までの間に本件フィルム約三八万本を騙取され、約一億八〇〇〇万円の損害を被ったが、同年四月被告会社の幹部が直接甲野から事情聴取をしたところ、同人は原告鈴木との共謀の事実を認め、また、客観的にみても、原告会社と甲野との取引価格が異常に安く、かつ、取引量も大量であったこと、右取引についての関係帳簿、納品書等からみて、甲野の単独犯行はありえず、原告鈴木との共謀ないし同人の幇助とみて被告会社は前訴を提起したものである。

(三) 甲野は前訴において被告会社の右主張を全面的に認めて請求を認諾し、その後、被告会社の告訴に基づき詐欺罪で起訴され、有罪が確定している。

被害者としては、損害を回復するために民事訴訟を提起して法的救済を求めることは当然の権利であり、かつ、原告鈴木が甲野の右犯罪に加功していたことは前述のとおりであり、また、少くとも被告らがそう信ずべき相当な理由があったものというべきであるから、被告らには原告ら主張の不当訴訟についての故意、過失はない。

3  請求原因4の事実は否認する。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1(当事者)及び2(前訴の提起及びその結果)の事実については当事者間に争いがない。

二  そこで、同3の事実、すなわち、前訴提起の違法性の有無及び不法行為の成否について検討する。

被告会社は、前訴において、原告鈴木が甲野と詐欺について共謀していたことの根拠として、請求原因3(二)(1)ないし(3)の事実を主張していたことは当事者間に争いがない。

被告会社が前訴を提起するに至った経緯等を見るに、《証拠省略》を総合すれば、次の事実が認められる。

1  被告会社は昭和五六年七月ごろから甲野と取引をするようになり、同人の経営する不二写真にカラーフィルム等を継続的に売却していたが、昭和五七年からその取引高は月額金二〇〇〇万円を超えるようになった。甲野は独立の店舗は持たず、右フィルム等を他へ転売していたが、昭和五八年一月になって、転売先の損害保険会社に納入するフィルムが大量に必要になったとして被告会社にコダック及びサクラのカラーフィルムを大量に注文し、同年一月二五日から三月二日までの間に本件フィルム合計約三八万本、代金合計約一億八〇〇〇万円相当を不二写真に納入させた。

2  代金決済は毎月二〇日締切の翌月二〇日支払の約束だったが、不二写真は右代金の支払ができず、同年三月ごろ倒産した。被告会社は倒産後直ちに甲野から事情聴取を行うとともに不二写真の関係帳簿や納品書等を調査した結果、右約三八万本のフィルムは、いずれも購入後直ちに原告会社へ格安の値段で売却処分されていることが判明した。事の重大性に驚いた被告会社の幹部は、同年三月から四月にかけて更に甲野から詳細な事情聴取を行ったが、甲野は暗に原告鈴木が本件フィルムの詐欺行為に加担していたかのような供述を行い、その結果、一応次の事情が明らかになった。

(一)  甲野は、原告会社の仕入部長である原告鈴木とは昭和五四年ごろからの知り合いで、原告会社とは昭和五六年ごろから取引があり、原告鈴木とは電話一本で取引が成立するような仲だったこと。

(二)  当時、本件フィルムのうち、例えばコダカラーフィルムcⅡ一三五の三六枚撮り一本の小売(店頭)価格は八一〇円で、メーカーが指定する卸標準価格は六四八円であり、業者間の市中卸価格は需要と供給のバランスに応じてこれより低額であって、甲野は被告会社から一本五五七円ないし五九〇円で仕入れたが、原告会社は甲野からこれをさらに一本四一五円ないし四四五円という格安の値段で現金取引によってこれを引き取っていたこと。

(三)  このように自己の仕入値段よりも大巾に安い値段で継続的に大量のフィルムを処分し続ければ、早晩甲野は仕入代金が支払えなくなって倒産するであろうことは目に見えており、このことは昭和五七年ごろから甲野と大量の取引をしている原告鈴木も気がついていた可能性が高いと考えられたこと。

(四)  原告会社と被告会社は昭和五五年ごろまで一時取引をしていたことがあり、甲野が原告会社に納入した本件フィルムのうちコダカラーフィルムの外箱には被告会社のマークがチョークで記されたままであることから、原告会社は右フィルムの出どころが被告会社であることを知っていた可能性が高いと考えられたこと。

3  そこで被告会社は、少くとも前記期間中に納入した本件フィルム約三八本分についてはいわゆる取込詐欺の故意があるものとして、昭和五八年七月甲野を刑事告訴したが、原告鈴木については、所轄警察署に事前に相談したところ、甲野から原告会社が購入したフィルムの代金が業者間の卸市中価格の三、四割以上安いものでなければ原告鈴木の共謀の事実を立証するのは現段階では困難であるとの趣旨の説明を受け、疑問を持ちながらも同人に対する刑事告訴をするのを留保し、弁護士と相談した結果、民事裁判によって甲野との取引により生じた損害の回復を図ることを考え、原告両名、甲野、不二写真及び運送業者である平塚を相手方として昭和五八年一〇月東京地方裁判所に前訴を提起した。なお、その際、原告会社はかねて業界では商売上も強硬な姿勢をとることで知られていたので、被告会社は原告会社に対して事前に訴訟外で損害填補の要求をするという手順は踏まないで訴訟提起をした。

4  一方、原告会社は創業以来、現金取引によって大量に商品を仕入れ、これを安く販売することを会社のモットーとしており、原告鈴木は昭和五六年から同社の仕入部長として専ら右仕入部門を担当していた。甲野とは昭和五四年ごろからの知り合いで、昭和五六年ごろから同人よりフィルム等を継続的に購入して本格的な取引をするようになり、取引高も昭和五七年八月までは月額約七〇〇〇万円であったが、同年九月ごろからは急速に増加し、月額一億円を超えるようになり、昭和五八年一月からさらに月額一億五〇〇〇万円前後の取引をするに至った。

5  ところで、原告会社は右のとおり現金取引をモットーとするため、当初はメーカーや特約店以外の業者から広く単発的に商品を格安で現金購入し、これを一般の客に比較的安い価格で売却していたが、営業規模が拡大するにつれ、継続的な安定した仕入先が必要となり、昭和五八年当時は、むしろ、メーカーや特約店から継続的に仕入れる商品が全体の約九〇パーセントを占め、甲野のような業者から仕入れる分は一〇パーセント以下であった。前者の場合には、一か月毎にまとめて現金で支払うのに対し、後者の場合には納入時に現金決済をするので、前者の場合よりもかなり低い値段で取引されるのが通常であり、甲野との間では、原告鈴木の相場感覚によってそのつど甲野との話し合いにより定められた。

6  昭和五八年一月二五日から三月二日までに甲野から購入した本件フィルム三八万本については、甲野は原告鈴木に対し、その仕入先を静岡ルートであるなどと告げ、また、その値段も従前と変らず、取引量も従前よりやや多いという程度であったため、原告鈴木はこれについて特段の注意を払わなかった。

なお、原告鈴木は、当時原告会社が他から同種のフィルムを仕入れた量及びその平均価格、甲野から購入したフィルムが占める比率、購入価格の比較、原告鈴木自身のフィルムの相場価格の把握方法、甲野との取引価格の決定基準等については、前訴及び本訴においても明確な供述を避けているため、その内容は必ずしも明らかではない。

7  結局、前訴においては、裁判所は、昭和六〇年六月、甲野の詐欺の故意を認めるべき具体的な証拠がないこと、少くとも原告鈴木による共謀の事実は証拠上認められないこと、原告会社と甲野との取引は昭和五三年ごろから行われており、昭和五九年九月から取引高は月額一億円以上に達し、取引価格も昭和五八年一月以降とそれ以前とでそれほど変化がないことなどから、原告鈴木において特に本件フィルムについてその入手先等につき特段の調査をすべき注意義務はないから、原告鈴木が故意又は過失によって甲野を教唆し又は幇助したとは認められないことなどを理由として、原告らに対する被告会社の請求を棄却する旨の判決をし、右判決は控訴されることなく確定した。

8  その後、昭和六一年六月、被告会社による前記告訴に基づいて甲野は、本件フィルムのうち昭和五八年二月一五日以降に納入させた分約一九万本代金合計約九五〇〇万円相当につき詐欺罪(単独犯)として起訴され、同年一一月これにつき懲役二年四月の実刑判決が言い渡され、量刑不当を理由として控訴、上告がなされたが、いずれも棄却されて昭和六二年九月右実刑判決が確定した。

以上の事実が認められ、右認定を左右する証拠はない。

三  ところで、一般に、私人間において民事紛争があるときは、これを解決するため民事訴訟を提起することは国民の権利であり、右訴訟において敗訴したからといって右訴訟提起が直ちに不法行為に該当するわけではないことは当然である。ただし、(一)当初から自己に権利がなく、訴えの理由がないことを知りながら、もっぱら相手方に損害を与え、もしくは自己に不当な利益を図ろうとして訴訟を提起するとか、又は、(二)訴えの理由がないことを容易に知り得たのに著しい不注意によってこれを認識しないまま訴訟を提起するなどのように、訴訟提起それ自体が正当と認められる権利行使の範囲を著しく逸脱し、公序良俗に反し違法性を帯びる場合には、右訴訟提起は不法行為を構成するものと解するのが相当である。

本件について、これをみるに、前記認定のとおり、被告会社としては甲野に対する事情聴取等の結果、原告らが積極的に甲野の詐欺行為に加担していると信じ、かつ、これにより被告会社が現実に被った約一億八〇〇〇万円の損害の回復を図るため、原告らに対し前訴を提起したことが認められるので、右(一)の場合に該当しないことは明らかである。

そこで、右(二)の場合に該当するか否かについて検討するに、前記認定のとおり、①不二写真の倒産後、被告会社の幹部が直接甲野から事情聴取するなどして調査した結果、前記2のとおり、甲野は暗に原告鈴木が加担していたかのような供述を行い、かつ、同(一)ないし(四)の事実が一応明らかになったため、原告鈴木の共謀ないし教唆、幇助等による加功が認められると判断し、弁護士と相談の上、原告らに対し前訴を提起したものであること、②前訴の判決では甲野の詐欺の故意についても認められなかったが、その後甲野は詐欺罪で起訴され、刑事裁判では、本件フィルムの約半分についていわゆる取込詐欺の故意が認定され、甲野に対する実刑判決が確定したこと、③原告会社が広く行っているという現金取引の実態が本件訴訟においても必ずしも明らかではなく、この点についての被告会社の事前調査にもおのずから限界があったこと、④被告会社としては、前記事情から原告鈴木についても刑事告訴をすることを検討したが、所轄警察署の感触からこれを留保し、民事裁判による解決を企図して前訴を提起したものであることが認められるのであり、前訴の提起に至る右諸般の事情にかんがみれば、前訴の判決では結果的には被告会社の請求は認められなかったものの、被告らにおいて、甲野が被告会社から本件フィルムを騙取し、これにつき原告鈴木が共謀ないし教唆、幇助等により加功していたものと判断して原告らに訴えを提起したことについては無理からぬ理由があるものと認められ、少くとも右訴えの理由がないことを容易に知り得たのに著しい不注意によってこれを認識しないまま訴えを提起するなど、右訴訟提起が正当の権利行使の範囲を著しく逸脱し、公序良俗に反する違法なものであるとは認められない。

したがって、被告会社の原告らに対する前訴の提起は権利の行使としてやむをえない行為であって、不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。

四  右によれば、原告らの本訴請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 奥山興悦)

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